ハマグリ掘りの話



子供の頃は、どこの浜でもハマグリ(※)がよう出た。大人も子供も丸篭を下げて、ハマグリ掘りに励んだもんじゃった。

黒髪島に住んでいた頃は、太刀ノ浦から仙島手前のヒトの浜まで歩いて行った。ヒトは砂浜じゃから子供でも簡単に掘れる。出る端から丸篭に放たり込うで、貯まっていくのが面白うて潮が満ちるのにも気がつかん。足が濡れて初めてずいぶん潮が満ちた事に気付く。磯に行ったちゅうものは行きは空の丸篭を下げて石の上を跳ぶように行けるんじゃが、戻りは重とうなった荷物を下げて、ハマグリを掘ってくたびれたのが石ごっとうの浜道を歩く辛さ。行きの何倍にも感じられるんじゃが、歩かん事には家につかんのじゃから、泣き泣きでも歩く。ようやく家に着いても、今度は親がハマグリを活かす塩水を汲みに出て行く。

翌日には自分達が食べる分以外は、生でむき身にする。カレーを食べるスプーンの柄の部分を取ったような専用の道具で、貝殻の間に差し込んで貝柱を切って中身を取り出す。それを塩水の中に貯めておいて、ひとつずつシダの茎にハマグリの目を刺して行く。一本の茎に三十も並ぶかね。それをむき身が無くなるまで延々と作り、両端に紐を付けて物干し竿にズラリと干してゆく。天気と相談しながら、固く干したら飴色になって出来上がり。

それを一番の大津に乗って市場に売りに行く。あれだけ手が掛かっていたけど、どれくらいで売れたものか、子供の私は知りもせんかったけど、あれは美味しかった。めったに食べさせては貰えんかったけど、炭火で焙って香ばしいのを貰う嬉しさは今でもニンマリしてしまうね。それを出汁にして交ぜ飯にしたのも美味しかったね。

そんな思い出も今は昔。何がどうなったもんか、どの浜にもハマグリは居らんようになった。あの楽しかったハマグリ掘りも今は出来なくなってしまった。私は時々夢に見る。ハマグリ掘りに行っていっぱい掘る夢。嬉しいなぁ楽しいなぁ、あっ夢かあ。ガッカリ。いつか海のご機嫌が直ってハマグリがいっぱいいる浜になりますように。

その為に私達が出来る事はありますか?


※大津島では「アサリ」のことを「ハマグリ」と呼びます


(H30.11)