夏の子ども




芋や稲の草取りに背を焦がす大人を横目に、子供達は長い休みを謳歌する。「家の事もあるんけん、二時間でよ」と泳ぎの許しを待ちかねて、脱兎のごとく飛び出してゆく。そんな時代の子供の話。

折しも巨大タンカーが隆盛だった時代。出光のタンクの沖に入港したタンカーを見た少年三人、伝馬船に乗りタンカー目指して、子分達の不安げな顔を尻目に意気揚々と漕ぎ出した。暫く見ていた子供達もだんだん小さくなる伝馬船に一人去り二人去り、しまいには弟だけになった。尚も見ていた弟だったが、ずいぶん時間が経った事に気付き、肉眼では見えぬ兄達が急に心配になり、家に飛んで帰った。

弟の話に島では大騒ぎ。というのも、途中の岩島辺りは船の難所として有名だからだ。あわてて男達に船を出して助けに行ってくれと頼んでいるさ中、豆粒ほどの何かが見え初め、どんどん大きくなったそれは件の少年達。大人達の心配をよそに「よう来たのう、ちゅうて菓子をくれたんでよ」「タンカーは大けすぎて壁のようなじゃった。大けな声で呼んでも、なかなか気が付いてくれんかったんでよ」と武勇伝の披露。子供達の尊敬の眼差しの有るまい事か。ただこの後、父ちゃんからこっぴどく怒られたのはいうまでもないけどね。

このほかにも歩み板で徳山まで行って見せると船出して、徳山湾の中程で通り掛かった船に拾われたり、タライの底に潜んで事故かと慌てて、こぶり込んだ親を大笑いして、ゲンコツを、にやしあげられたのや、昭和の悪童たちの武勇伝の一席。


(H28.7)