母から子へ ?



昔はよう、饅頭を炊いたよねと、このところ話す。島で言う饅頭は握り拳大のさんきらいの葉をしいて蒸した物で、食べるとほのかに炭酸の香りがして、年を取った今、それが母の顔や七日日の海を思い出させる。  昔、海の側に墓があった時代は、七日日には泳いで海から上がって、墓に手を合わせまた泳ぐのを、七回繰り返していたものだったそうだ。その時供えてあるのが饅頭で、泳いでお腹が空くとそれを食べてまた泳いでいたそうだ。浜を吹く風に湿りが含まれるまで泳いで、帰ったら夕食までにまた饅頭を頬張る。なにせ饅頭は大ぞうけにいっぱい作ってあるのだから、翌日のオヤツも饅頭だろう。母親は残った饅頭の大ぞうけを痛まんように、井戸に吊るしていたものだ。

さて翌日、学校から楽しみに帰ってみたら、饅頭の入っていた大ぞうけが、上がり端に空で置いてある。一足早く帰った妹弟が、友達にええ顔をして皆で食べたと言う、口の中は饅頭の甘い味でいっぱいなのにっと、食い物の恨み、妹弟を追いかけまわして騒ぐ。  見かねた母親が、仏様に一つあるけん、それを食べりゃあえかろうと最後の一つを食べさせてくれた。後で考えるとそれは最後に一つ、母親が食べられるものじゃったんよね。申し訳ない。などと、昔を思う内、どうでも一回、炭酸饅頭を作ってみようと思い立ち、この前から何度か作ってみた。粉と炭酸の割合はグーグル先生にお伺いをたて、小麦粉二百グラム、炭酸四グラム、卵砂糖酒を捏ねて、前日作っておいた餡(あん)をつつみ葉蘭を敷いて蒸した。ぜんぶ、生き方と同じ、これ位なもんでいいじゃろうで作った饅頭は、悲しいかな、餡(あん)は練りがたらず、皮は固く散々な出来上がりだった、この数ヶ月。人間七十になっても反省しきり。たかだか田舎饅頭一つ出来んとはね。じゃから、また作ろうと思う。母親の味に近づくまでは。上手く出来たらよぶよ。


(R3.7)