石屋の子やとらぁ




「オーイ、子らぁを家に入れえよ」と、父ちゃんの大声。母ちゃんは庭で遊びよる子やとを、急いでかき集め家の中の一番奥まった部屋に入れ、その上に覆い被さる。程なく、ドォーンと腹に響くような音がしたかと思うと、バシバシバリバリとけたたましい音が屋根で響く。

音が収まった頃、ようやく母ちゃんは子供達を離して、「遊んでもいい」と外に出す。庭には小さな石の欠片が、たくさん落ちている。発破が終わったのだ。「石を片付けるまで待て」という母ちゃんの言葉など聞いた風もなく、子供達は中断された遊びに戻って、くんじゅうなす。母ちゃんは大急ぎで竹箒で、欠けたままで鋭い小石を掻き捨てる。発破で飛び散った石はとても鋭く、子供達の足など簡単にキズつけてしまうから。父ちゃん達は、発破で落とした岩にたかって、次の作業の算段をしている。子供達にとっては、そんな大人の状況など、どこ吹く風で乗ると危ないとされたクズ石の山やら、また切り出す前の大岩の上を飛び歩いて遊ぶ。

黒髪島太刀ノ浦、石切を生業としていた頃の子供時代大人達には石をイン2やイン5というサイズに切る、それをソリで崖っぷちまで運び、崖を転がし落とす、落とした石をモッコで細い歩み板を渡って船に乗せる。全て人力の厳しい暮らしの日々だったが、子供達は豊かな自然に抱かれて、おおらかに生を育んだ。時には発破で屋根に穴が開き、そこから青空が見えたとしても、時には嵐の夜に真っ暗な中、妹が産まれたとしても、毎日がそれは色濃くその一瞬を生きていた。学校に上がるからと黒髪の暮らしを終え、島を離れる時は、とても切なかったなあ。今でも私は黒髪を見るたび、命燃やして遊んだ日々を懐かしむ。

(H29.5)