「ヤンマーのゆで卵」



 この前テレビで、池の水を全部抜くちゅう番組をみて、その時使っていた、揚水ポンプをみて、どこかでみたようなと思うてね、つらつら考えるに、子供の頃だと思い当たった。麦の脱穀機のヤンマーじゃったんよ。

麦の脱穀は、仲間仕事で、近くの人が何軒かで寄り合ってやったもんじゃった。その時の脱穀機の動力がヤンマーじゃったんよ。本当にヤンマーのメーカーじゃったかどうかわからんが、その頃はこうした動力の事はおしなべて、ヤンマーと言いよったね。

さて、そのヤンマー、ハンドルを回して起動するんじゃが、一回位じゃあなかなか掛からん。何度目かでけたたましい音と共にヤンマーが掛かると、後はもう戦場。麦を寄せる人、脱穀して下の段に投げ落とす人、機械の横から出る麦を袋に入れる人。それこそ寸暇も無あほど、動く動く。

頃合いを見て、父親が「一服しょうやあ」と声を掛けてようやく休憩。その時父親が私に、ヤカンに水を入れて持って来させ、ついでに今朝採ったばかりの卵を持って来させる。ヤンマーの横には、水を入れるタンクが、蓋もないまま付いちょって、それにヤカンの水を入れ、卵を入れる。休憩後、しばらく動かすと、その水はちょうどええ具合に熱くなって、ゆで卵が出来上がる。沢山はないから、私達子供のおやつになる訳で、他にも仲間の人が朝焼いた水餅を二つに折って中に黒砂糖を挟んで、紙やボロで幾重にも包んだのを、

※ほとくらから出してくれたり、こおり餅の焼いたのをくれたり、子供に気を使って貰った。

ヤンマーのやかましい音と共に、酸っぱい水餅の味や、下の段の麦ワラの山に飛び込んで遊んだ日を、ふと思い出したある日の出来事。

※ほとくら=ふところの方言

(H30.1)