うじゃける話




つい最近の話。息子が「わしは額にかいいもんが出来て、かゆうてやれんのよ」と言うから、「どれどれ」と見てみるともうブツブツは無くなって、赤みが出て「うじゃけ」ちょった。私が「これはもう、うじゃけちょらあね」と言ったら、息子「うじゃけるちゃあ何か。初めて聞く言葉じゃが」と言う。そこで「初めてのはずはない」と思いつつ「、うじゃける」はオデキのようなものが、時間が経つと赤く腫れて後に破れてそこから膿が出てきた

状態の事だと説明した。

 最初から ビロウな話で失礼したが、この「うじゃける」で思い出したことを、書こうと思う。それは母に聞いた事。母が子供の頃、昔は「よう」と呼ばれる悪性のデキモノが背中に出来、熱が出て痛くて物も食べられずただ寝たり転げたりしていた事があったという。この頃と違いそうそう医者など行かなかった時代。色々な行商の人達があったそうで、その中にたまたま灸を下す人があって、母を見て「この子はどうしたのか」と聞かれ、訳をいうと祖母に味噌を持って来させ、それで「よう」の周りをぐるりと土手を作り、その中に○○を入れ、その外側には藁で一回り大きくて高い柵を置かせて服に汚れが付かぬようにしたのだという。それで多分灸もすえられたのだろう、その晩からとても楽になって、数日内には、「よう」が「うじゃけ」て膿が沸き出すように出て、すっかり治ったのだという。

 さて、ここで味噌の土手の中に入れた物が何であったのか、残念な事に忘れてしまった。多分食油ではなかったかと思っているのだが母亡き今、もはや確かめる術は無い。またそういう治療をした人にはいくら払ったのか、貧しい島にあっては そう大したお金も払えなかったと思われるが、母は常々「あのモグサ売りさあにわしは命を救われた」と言っていたものだった。

 栄養状態が良くなった今、オデキそのものを見る事もないが、もの凄く悪い状態が「うじゃけ」たあとには、ピンクのきれいな新しい皮膚が再生された。よく偉い方が「膿を出し切って、正します」なんて言っているが、「うじゃけ」てピンクの皮膚を待たず、言った事で終わった事になっているんじゃないの?って思う事ある気がせんじゃろうか。

 なあんて、うちの子が「うじゃける」を知らん事から母を思い出した話でした。


(R1.9)