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つづの木の道

  • rainoshimaoz
  • 11月15日
  • 読了時間: 2分
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しまの墓参の道の側にある林から道の上に伸びる木の中に、つづの木がある。秋になると薄黄色の透明感のある実を落とす。その実の中には、真っ黒で硬い種があり、薄黄色の皮を破って黒い種が道に転がっていることもあり、それを見て母がいつも「あら、つづが落ちちょらあ」と言って黒い種を手に取る。その度に「この種が羽つきの、あの羽の下の黒いところなんでの」と言うのが常だった。

毎年それを聞きながら大きくなった私は、ある年その実を拾って帰り、硬い種に釘で少しづつ穴を開けた。その硬いこと硬いこと。不器用な子供の手では中々穴は穿(うが)てず、浅い穴が少し開いただけで、良しとする。この頃から私は自分に甘い。そこで、次は羽だと言うことで、飼っていた鶏小屋に行き、その辺りに落ちている汚れていない羽を拾ってきて、くだんの穴に挿そうとするが、穴は浅いのでとてもじや無いが羽は脚の部分も隠せはしない。尤(もっと)も子供の知恵なんだから、羽の足元を切るなどという事にも気づかない。あしの長いままつっ込もうとするものだから、足元の覗いた羽が生えたような不恰好な物しか出来なかった。それでもそれを妹に羽を作ってあげたと恩に着せて羽子板を持って来させ、つかせてみた。当然の事ながら、いっぺんで羽は抜けてしまい、何度か挿してはつかせてみたが、とうとう妹は嫌気がさしてやめてしまった。姉ちゃんらしい処を見せようとした私の作戦は、物の見事な惨敗で終わる。思い出す度にため息の出るつづの話。

まあ、我が家の話とは別にこのつづ、昔は洗剤やシャンプー代りに使っていたという。それは種では無く、外側の薄黄色の皮の方を使うのだそうだ。皮を水に浸けて揉んでいると泡が出てくると言う。それで洗濯したり、髪を洗ったりしたそうだ。残念ながらそっちの方は試してみなかったが、いつかやってみようかなと思っている。

島では、つづと呼ぶこの木。世間ではむくろじと呼ぶそうだ。で、グーグル先生にお伺いを立てたら、私の知っている知識など瞬時に答えが出た。何かガッカリ!「なんて時代だっ」なんてね。


(R5.1)


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