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ほいかめさん

  • rainoshimaoz
  • 12 分前
  • 読了時間: 2分
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私の祖父は亀松と言います。通称かめーオジー。若い頃は随分ごっぽう者で、祖母を散々泣かせたそうです。遠洋の船を作って稼いでも、チャンリチャンリと皆使って戻り、一銭の金もない。昔はツケで買い物をしていて、それを盆正月にまとめて払う生活だったそうで、かめーオジーが戻ったら支払いをする積もりの祖母は途方に暮れる。盆が過ぎたら正月迄はまたツケで買わせてくれていたそうで、かめーオジーが戻ってから盆が明ける迄は外にも出られず家にかごうじょった(屈んでいた)と後年祖母が話していましたっけ。それに倣えで子供達も外で騒がしく遊んではならんと言い付けられて、窮屈な思いをしたらしい。そんな生活がそうそう続くものでもなく、遂には船も売ってしまわねばならなくなり、借金だけが残って冬の時代が続いたそうです。だから一家全員働きに働いて生きていた。大陸に出る者もいたし、働いただけのお金は全部親に差し出した孝行者もいて、大きな波を乗り越えた頃のかめーオジーの話。あるオジサンと仲間で、請負の仕事をしていた。

そのオジサンは苦労人で、貧しい暮らしで学校にも行けなかったそうで、字は少し読めるけど、計算は出来ない人だったとのこと。それで騙された事も沢山あって人に対して不感を持っていたと言います。

月末に稼ぎを分ける時、話し合って綺麗に半分分けにしようと決めて、貰って来たお金を計算して渡しても、誤魔化されているんじゃないかと、いつも納得せずに機嫌が悪いのだそうです。何度もそうなので、かめーオジーは一計を案じてオジサンにお金を分けさせる事にしました。まず2人が向かい合わせに座って、貰って来たお金を全部真ん中に置いて、オジサンがひとつづつ「ほい、カメさん」と言ってひとつかめーオジーの前に、「ほい、わし」と言って自分の前に、それを最後のひとつになるまで、「ほいカメさん、ほいわし、ほいカメさん、ほいわし」と毎月繰り返したそうで。その場面を想像する度、面白くて大好きな話でしたね。

ここでかめーオジーからの格言をひとつ「世の中に恐るものが三つある。雨の漏るのとバカとしゃくぎん」しゃくぎんは借金の事、金に苦労して景気の良い時と悪い時の人からの態度や、それが見抜けなかった我が身を振り返っての言葉。その一族はまだまだ貧乏からは脱却出来んけどなあ。由緒正しき貧乏人。


(R5.5)


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