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おきだの話



暑い暑い夏を乗り越えて「やれやれわしらあは、ようあの暑い夏を生きちょったでえのう」とは、秋のバアサマ達の立ち話。昔のようにおきだに涼みに出る位では追いつかんこのところの夏。一昔前なら夕飯がすんで一息付くとき、おきだに出てウチワで蚊を追いながら、同じように涼みに出た近所の人達と、畑の話や子供の事季節の話など とりとめのない話を ええいっときせるちゅうと、ちょうどええ具合に身体も冷えて、1日のストレスも解消できて、すっきりして蚊帳の中に潜り込む。ちゅうように、暑さにもまだ優しさがあったよね。日なかの地獄の責め苦のような田畑の草取りやら、毎日の水汲み、肥かたぎ、1日が終わって「やれ暑かったでよう」と、労働から解放されておきだで休む時は、島の人にとってはほんのいっとき、心も解放できよった気がせるね。おきだだけじゃあのうて、波戸にゴザをひいて、枕まで持って出てしばらく横になってから帰る人もおった。おきだといい、波戸といい、きつい労働の毎日に ささやかな癒しの時間。あの頃の人達はそれを上手に大切に使いよったよね。

おきだ、島ではざがだになるから、本当は「おきざ」。置き座なのか、沖座なのかわからんけど、今はなき島の夏の風物詩。

(H28.9)


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